外部環境の変化に対応する 〜正しく軌道修正するための経営管理サイクルの実装〜

 「経営の舵取り」とは上手く言ったものです。会社や事業の経営は、海を船で渡り目的地を目指すのによく似ています。船は出航した直後は目的地へ真っ直ぐ向かいますが、途中で潮や風の変化によって違う方向へ流されてしまいます。だから船長や航海士は潮や風といった船に影響を与える外部環境の変化に合わせて、舵を操り船の軌道を修正します。また船内でも変化が起こりえます。病気や紛争、水や食料や燃料の不足など、乗組員を抱えて船を正しく走らせることが困難になる自体が発生し得ます。こういった内部環境に対しても対策する必要があります。そして優秀な船長や航海士はこういった変化の予兆を察知し、影響が大きくなる前に対策をするわけです。

 経営の場合、外部環境は為替や原材料、エネルギー価格、運賃、関税などであり、それらに影響を与える各国の政策や規制、戦争などです。またビジネスの場合は顧客や競争相手がいますので、顧客ニーズや競争相手の戦略の変化も外部環境の変化として自社の経営に影響を与えます。一方で内部環境としては、開発力、品質力、生産能力、営業力、人材・労務構成、機械設備、知財、資金などになります。情報やノウハウなどの無形の資産も自社の内部環境の変化に影響を及ぼします。経営者はこういった外部・内部の変化に対応しながら、目標達成に向けて日々取り組んでいくことになります。

 こうした環境変化をいち早く捉えて対策するにはどうすればいいでしょうか?ステップごとに解説します。

STEP
毎月決算する

 まずは変化を認識できないことには対策のしようがありません。できれば問題が大きくなる前に予兆を捉えたいところです。そのためにはちゃんと毎月決算することが重要です。中小企業や小規模な事業者さんの場合、会計や税務は外部の税理士さんへ委託しているケースも多いと思いますが、毎月ちゃんと資料を渡して月次試算表を確認するようにしてください。

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変化があれば原因を調べる

 そして売上、製造原価、販管費、現預金残高、棚卸資産残高などがどのように推移しているかを確認し、大きな変化があれば変化の原因を特定します。もし売上が減少している場合、単なるタイミングのずれなのか、受注数が減少しているのか。製造原価や他の項目も同じで、変化があればその原因を調べます。

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変化の根本原因を特定する

 売上が減少していて、それが取引先からの発注量が減少している場合、なぜ発注量が減少しているかその根本原因を特定します。取引先の経営状態が悪化しているからなのか、全体数量は同じだが自社への発注量が減っているのか。製造原価が増加している場合、原材料や部品の価格高騰が原因なのか、労務費や経費が膨れ上がっているのか、労務費や経費が膨れ上がっている原因は何か、それは一時的なものなのか恒久化していきそうなのか。ここまで調べてようやく対策案の検討ができます。

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対策案を検討する

 STEP3での分析結果に応じて対策案を検討します。

 売上減少の理由が取引先の経営状態が悪化している場合、①自社が協力して取引先の経営改善策を一緒に検討する、②別の取引先を探して売上減少分を補填する、などが考えられます。

 自社への発注量が減っている場合、①コスト削減、②品質改善、③新製品提案、④共同開発、などで売上を戻す策が考えられます。

 原材料や部品の価格高騰については、①納入先への値上げ交渉、②仕入れ先の変更、③他社との共同購買による単価引き下げ、④製造ロスの削減、などが考えられ、労務費については、①機械設備の新規導入、②生産性の改善、③外注化、による直接労務費の低減などがあります。

このように、変化が起こっている根本原因によって取るべき対策が変わるので、STEP3まででしっかり真の原因を特定することが重要です。

STEP1からSTEP4までは毎月決算会議を開いて、経営幹部と現場責任者で検討を行うことが重要です。会議参加者を決めて、経営管理サイクルに組み込んで意運用しましょう

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年に一度は将来起こり得る変化を予測する機会を設ける

 未来を完全に予測することは不可能ですが、近い将来起こり得る変化をある程度予想することは不可能ではありません。例えば、自社の事業領域、または取引先の事業領域に新規参入が増えてくると、最初は大きな影響はなくても数年後には既存プレーヤーを脅かす存在になるでしょう。例えば日本の家電業界などはそうです。昔は日本のトップメーカー数社が市場シェアを分け合っていましたが、技術が陳腐化して商品がコモディティ化すると他業種からの新規参入や海外メーカーの日本市場参入が相次ぎ、今は完全なレッドオーシャンとなっています。こうなるとかつてのトップメーカーの売上が減少し、トップメーカーと取引があったサプライヤーもそれにつられて売上が減少しています。こういう変化はある程度予測可能です。

 しかし日々の事業活動を行いながら、将来予測までやるというのはなかなか難しいため、年に一度は1日から数日間をかけて①経営に影響を与える環境変化(外部・内部)の確認、②将来起こり得る具体的事象の予測、③それに対する対応策、を検討することを勧めます。

 ブルーシフト・コンサルティングでは、上記の月次決算会議や将来予測を行うための経営管理サイクルの導入支援も行っています。詳細をお知りになりたい方は無料相談へお申し込みください。