モノの価値と価格設定 〜コストプラス、知覚価値から感性価値思考へ〜

 自分たちの商品やサービスの価格はどのように決めていますか?市場を見て大体これくらいが妥当だから?かかったコストに対して必要な利益を乗せて?もしくは、買って欲しいから競合より少し安く?それで儲かれば構わないのですが、利益が十分残らなくて困っていたりしませんか?ということで今回は価格設定について解説したいと思います。

 物の価値(価格)というのは単に原材料の価格や製造コストで決まるというものではありません。例えばミネラルウォーターの製造原価は十数円と言われています。ソーダ飲料や清涼飲料水なども似たようなものでしょう。数千円の口紅と数十円のクレヨンの材料費はほぼ変わらないと聞きます。薄い利益しか取れない商品がある一方で、高い利益率を獲得している商品というものがあるのです。どれはどういうことなのでしょうか。

 商品の価格を決める方法はいくつかあるのですが、今回は「コストプラス法」と「知覚価値法」について解説したいと思います。コストプラス法は製品を生産して販売するのにかかるコスト(原材料費、間接材料費、開発費、人件費、宣伝拡売費など)に必要な利益を乗せて価格を決定するものです。例えば、トースターを作って売るのに10,000円かかり、3%の利益を乗せたいので販売価格は10,300円にしよう、と簡単に言えばこういうことです。

 一方で知覚価値法は市場で実際に売れそうな価格を決定して、そこから利益が出るようにコストを決めていくアプローチです。例えばトースターはこのデザインでこの機能なら9,800円で買ってもらえそうだな、というのを決めて、そこからかかるコストを計算していき、採算が合いそうなら開発生産するという感じです。需要志向のアプローチといってもいいと思います。コストを極力下げてなるべく高い価格で買ってもらえると儲かるし、コストと売価の差が小さいとあまり儲からない、ということになります。

 このような状況の中で、近年重視されているのが「感性価値」や「UX(User Experience)=ユーザー体験」です。物質的な価値ではなく、所有することや経験することで得られる充足感でお客様に満足してもらおうというものです。高級旅館のおもてなしやテーマパークでの特別な体験などに人はたくさんお金を使いますが、それをさまざまな製品やサービスに適用しようという考え方です。例としてよくアップルの製品群が引き合いに出されますが、もっと古くからもそういった製品は存在していました。例えば口紅です。化粧品メーカーは女性が幸福感や充足感を得られるように、そういう世界観を作るために製品のデザインからイメージまで作り込んでマーケティング戦略を立てています。「感性価値志向」のアプローチです。

 このように、自分たちの商品やサービスの価格を設定する場合は、お客様たちが幸せになってもらえるようなストーリーや世界観を醸成するようなマーケティング施策もセットで検討することが大切です。一時期「プライスレス」という言葉が流行しましたが、心に残る製品やサービスはまさに材料の価格を大きく超えた価値を提供します。そういった製品やサービスへ育て上げていく、そういう意識が大切になります。

 スティーブ・ジョブズはペプシコーラの社長だったジョン・スカリーを引き抜く際にこんなことを言ったそうです。

このまま一生砂糖水を売り続けたいのか?それとも私と一緒に世界を変えたいのか?

 なかなかの挑発だと思いますが、ジョン・スカリーが砂糖水に価値を付けて売る力があるからこそ、こうやって口説いたのでしょう。

 事業者の皆さんも、ご自身の製品やサービスに「感性価値」「体験価値」を付加して、より顧客に喜んでもらえるよう取り組んでください。

 ちなみに子供用の無添加のクレヨンを使って口紅を自作できるそうなので、マイリップを作ってみたい人はググってみてください。

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