大企業とは異なる立地で戦う〜小規模事業者が磨くべき強みとは〜

 前回の記事(リンク)ではダビデとゴリアテの対比から小規模事業者の勝ち方について考えてみました。今回は現実世界のデータも見ながらもう少し具体的に見ていきたいと思います。

 静岡県立大学の岩崎邦彦教授による消費者調査で「消費者は小さな企業の強みをどのように認識しているか」というものがあります。全国1,000人の消費者に下記の文章を示し、空欄に自由に言葉を入れてもらうというものです。

小さな店の強みは、_________________である

 TOP10は下記の通りでした。「個性」がダントツに多く、類似する言葉と考えられる「独自性」「専門性」「こだわり」を合わせると、回答者全体の約3分の1が「個性」やその類似の要素が小規模事業者の強みだと認識していることが分かります。また「小回り」「サービス」「専門性」「接客」など、小さいからこそ打ち出せそうな項目も上位に来ています。

順位キーワード人数
1個性216
2サービス74
3独自性59
4小回り51
5専門性43
6こだわり30
7親しみやすさ27
8融通26
9地域密着24
10接客22
出典:小が大を超えるマーケティングの法則(日本経済新聞出版社社)

 また、大型店の強みをどう認識しているかも調査しています。下記の文章を示し、空欄に自由に言葉を入れてもらうとその結果は下の表にようになりました。小さな店の強みと全く違います。これは大型店と小規模店・個人店では求められているものが全く違うということを示しています。

大きな店の強みは、_________________である
順位キーワード人数
1品揃え191
2豊富127
3安さ117
4価格80
5多い74
6種類64
7品数53
8大量仕入れ31
930
10総合性28
出典:小が大を超えるマーケティングの法則(日本経済新聞出版社社)

 ここから言えるのは、下記が小規模事業者の勝ち方であるということでしょう。

  • 大企業との真っ向勝負を避ける(真似や後追いはしない)
  • 小規模だからこそ打ち出せる特徴を武器に戦う
  • 注力するのは「個性・独自性・専門性・こだわり」と「小回りの効くサービス・親しみやすさ」

 では小規模事業者の強みは多い方がいいのでしょうか?もう一つ興味深い調査結果があります。同じく1,000人の消費者に対して行ったアンケートとその結果は下の通りでした。

パンを買う場合、次のA店とB店のどちらから買いますか?
A店・・・こだわりのパンを販売する店
B店・・・こだわりのパン、菓子、清涼飲料水、食料品を販売する店
A店79%
B店8%
どちらも同じ13%
出典:小が大を超えるマーケティングの法則(日本経済新聞出版社社)

 品揃えは多い方が良いように思いがちですが、多くの消費者は「専門性の高い店」をより好むのです。昔から「カレー専門店」や「パスタ専門店」などはありましたが、最近さらに細分化された専門店を多く見かけます。「高級食パン専門店」「からあげ専門店」「タピオカ専門店」など。飲食だけではありません、「中古車買取専門店」「パソコン修理専門店」なども事業の専門化の代表例です。

 ダビデが重たい鎧と剣を捨て(大きい者の真似をしない)、最大の強みに一点集中する(投石技術)ことで巨人ゴリアテに勝利したように、小規模事業者も大企業には無い独自の強みを追求することが成功の条件と言えます。